早船福太郎氏は、60年以上のキャリアを持つ竹細工の職人。竹細工は、京都で造園の技法の1つとして発展した技術で、江戸時代多くの職人が庭園以外にも様々な日常雑貨を作る技術として使われてきた。代表的な物に、ザル、帽子、籠、輿などがあげられる。
早船氏は、幼少の頃より父親の指導を受けて、その技を受け継いだ。現在も技に磨きをかけながら様々な工芸品を制作している。
現在、早船氏の最も多い作品は日本庭園の垣根がある。100種類以上の垣根の制作が行え、どの様な様式の庭園や庭にも調和させることが出来ると誇る。
特筆すべき、彼の技法には歌舞伎の舞台に使われる「草」の小道具である。これは、竹を薄い柵状にした竹細工で、早船氏と弟しか日本で作る事が出来ない。作り上げる草は一枚の厚さ0.3mmから0.4mm、もっとも薄い物では0.1mm以下と言う驚異的な薄さに仕上がる。これは、カンナなどでは竹が反り返ってしまうために機会では作り上げる事が出来ず、また彼ら以外に作ることが出来ない技法である。歌舞伎役者に言わせると、紙で作った草の小道具では、音が薄く臨場感が出ず、演技に集中出来ない。早船氏の「草」のこすれる音は、本物と同じ音がすると言われている。現在も、歌舞伎の舞台では早船氏が作った「草」が活躍し、歌舞伎の舞台を陰から支えている。
客の為に一番良い物を作るが信念。そして最高の報酬は客の笑顔である、と語る早船氏。しかし、頑固な江戸っ子の職人として譲れない時は、時折大げんかを起こすと笑いながら語る。職人の仕事へのこだわりが伺える一面である。