1588年、戦国時代の武将蒲生氏郷により開かれた松坂の城下は、江戸時代になると商人の町として大いに栄えた。松阪商人の江戸店は、日本橋周辺の大伝馬町、本町、本石町、駿河町、堀留町などにあったが、特に大伝馬町一丁目には、松阪木綿を商う店が集まっていた。18世紀初頭には、大伝馬町には木綿店74店のうち、伊勢国出身者が約6割を占めていたと言われ、その中でも松阪商人がもっとも多かった。
小津家は、伊勢国国司北畠家の一族として木造家に仕えた三次隼人佐長年を先祖としている。創業の祖とされる三代目長弘は、1653年に大伝馬町一丁目に紙店小津屋を開業。その後、1698年には隣地へ木綿店を1784年には、本町四丁目へ紙店を開業している。また、松阪においては、数多い江戸店持ちの豪商の中でも筆頭格に挙げられ、1755年には三井、長谷川等と共に、紀州藩の御為替御用を命じられ手居る。
旧小津清左衛門家は、松阪市指定史跡。主屋は木造二階建。中心部分は、17世紀末から18世紀初頭に建設され、その後、明治期まで数度にわたり増築・改修が行われている。内部には見世の間・奥見世の間・勘定場・供部屋・茶の間・お家の間・表座敷・奥座敷等、15ほどの部屋がある。