約千年余り前、今の大阪市阿倍野の郷に阿倍保名が住んでいた。父は豪族であったが、人に騙されて所領を没収されたので、保名は家の最高を願い、信太森葛葉稲荷神社に日参していた。ある日の事、数人の狩人に追われていた、白狐を助けた。その時、保名は手傷を受け、その場に倒れた。白狐は、葛の葉という女性に化け、保名を介抱して家まで送り届けた。それから数日ご、葛の葉は保名を見舞い、やがてお互いの心が通じ合い、妻になり、童子丸という子供をもうけた。その子が五歳の時に、招待がわかり、「恋しくば、尋ねてみよ、和泉なる、信太の森のうらみ葛の葉」の一首を障子に書き残し信太の森へと帰ったといい伝えられる。この葛葉伝説にまつわる狐がおまつりされているのが、この神社で今も人々からの信仰を集めている。その時の子が後の安倍晴明となる。
葛の葉稲荷神社の楠
樹高:21m
幹周:11m
樹齢:約700年
葛の葉稲荷の楠は「泉州志」や「和泉名所図会」をはじめとする、江戸時代の文献に「千枝の楠」として紹介されているように、枝が四方に繁茂しているところから「千恵(智恵)の楠」とよばれ、また幹が二つに分かれていることから「夫婦のクス」とも呼ばれている。