開基:不詳
創建:729~749年
正式名称:崇福山 安楽寺
安楽寺は長野県別所温泉にある曹洞宗の寺院。国宝の八角三重塔と長野県最古の禅寺で知られる。創建は平安時代の行基であると伝えられているが、詳しい歴史は伝わっていない。鎌倉時代には栄えたが、室町時代には衰退し、八角塔を残してすべて失ってしまう。その後、1580年頃に曹洞宗の寺院として再興された。
八角三重塔
この塔は、一見四重塔に見えるが、国宝に指定された折り、初重の屋根はひさしに相当する「裳階もこし」であるという見解で、裳階付き八角三重塔として認定された。
建築年代は詳らかではないが、安楽寺が鎌倉北条氏の外護によって栄えた寺で、開山樵谷惟仙禅師が入宋僧、二世㑃牛恵仁禅師が中国より帰化僧として住職していた頃、また当地に守護として信州一円に威を張った塩田北条氏が館を構えた鎌倉時代末期以外に考えられないというのが定説となっている。塔は本来、仏舎利を奉安したものだが、中世以降は特定の人物や戦死者の供養のために建てられた例が多く、おそらくこの塔も北条氏の供養等として建てられたものであると考えられる。
建築様式は当時、中国宋代の先進技術であった唐様(禅宗様)を用い、扇垂木・弓形連子・詰組など、和様の塔とは違った重厚な佇まいを見せている。八角塔は奈良・京都などに記録に残っているが、それらは失われており、現在は国内唯一の八角塔である。