花沢は焼津市北方の山間部の谷地にある30戸ほどの山村集落。重要伝統的建造物群保存地区に指定されており、保存地区は南北800m、東西約240mで、街道沿いの屋敷地と、その周りの畑や山林を含む。屋敷地が密集するのは南北約500m、東西約50mと細長い範囲に限られる。
保存地区の中央には旧東海道といわれる日本坂峠への道が花沢川と並行して通っている。屋敷は街道の西側に集中、傾斜地のために石垣を築いて敷地を造成している。石垣と附属屋が階段状に連続する、独特の景観を作り出している。
建物には江戸時代の主屋や附属屋が残り、明治時代後半以降のお茶・蜜柑・養蚕の盛行とともに建物が増改築されていった。特に蜜柑栽培は花沢を潤した生業で、附属屋には農作業や蜜柑貯蔵のほか、蜜柑収穫時期に季節労働者が宿泊する建物も増築されました。中には隣り合う附属屋の2階をつないで部屋とした建物もある。
山の谷地に形成された花沢の景観は、街道沿いに連なる石垣と建物群が周囲の山林・畑地・川などの自然環境と調和し、独自の歴史的風致を形成している。