種類:木曾義仲 巴御前
木曽川三十六景の1つ
歴史が漂うこの渕は、巴状にうずまき、巴が渕と名付けられた。伝説には、この渕に龍神が住み、化身して権の守中原兼遠の娘として生まれ、名を巴御前と云った。義仲と戦場にはせた麗将巴御前の武勇は、痛ましくも切々と燃えた愛の証でもあった。巴御前の尊霊は再びこの渕に帰住したと云う。法号を龍神院殿と称えられ、義仲の菩提所徳音寺に墓が苔むして並ぶ。
絶世の美女巴は、ここで水浴をし、また泳いでは武技を練ったと云う。そのつややかな黒髪のしたたりと乙女の白い肌元には、義仲への恋慕の情がひたに燃えていた。岩をかみ蒼くうずまく巴が渕、四季の風情が魅する巴が渕、木曽側の悠久の流れと供に、この巴が渕の余情はみつみつとして、今も世の人胸にひびき伝わる。